はじめに
この記事の中では具体的な回線の名前を挙げて一つ一つ比較することは行いません。光回線を選ぶ際にどのようなことを考慮すればよいか、ネットワークエンジニア的視点で考え方をご紹介します。
一般的な光回線選びのサイトを閲覧したところ、過剰に良い性能でその分費用が高い光回線を紹介していたり、事前に考慮すべき点の説明が漏れている記事が散見されました。その通りに従っても決して悪い選択ではないのかもしれませんが、この記事の中では他の記事ではあまり述べられていないことまで言及しているため、ぜひ参考にしていただけると幸いです。
本記事は少しお勉強要素が多めとなっています。そんなのはいいから、おすすめの光回線が知りたいという方は、最後に1つだけ筆者のおすすめ回線をご紹介しているのでそちらをご覧ください。
事前確認事項
まずは光回線敷設に伴う事前確認をしましょう。これらを押さえておくことで、余計な労力をかけることがなくなり、また回線選びにおける視野を広げることができます。
住んでいる家で光回線を引いてよいかの確認
一番最初に光回線を自宅に引けるかどうかを確認しましょう。賃貸物件やマンションでは光回線敷設に伴う工事が許可されていない場合があるため、必ず事前に確認しておくことが大切です。万が一工事が許可されていない場合はこれ以上光回線について調べても無駄足になってしまいます。残念ですが、モバイルルータの利用や(簡単ではありませんが)引越などを検討しましょう。
住んでいる地域で引ける回線種別の確認
次に、自分の住んでいる地域で利用できる光回線の種類を確認します。日本では主に以下の3つの回線種別があります。
- フレッツ系(ドコモ光、SoftBank光などたくさん)
- 電力系(eo光、コミュファ光など)
- 独自回線系(NURO光、auひかりなど)
フレッツ系
まずはフレッツ系ですが、ややこしいことは割愛しますが、電力会社の回線やNURO光、auひかりなど以外のほとんどの光回線はフレッツ系です。例えばドコモ光やSoftBank光はフレッツ光が提供する光回線を利用させてもらってサービスを提供しています。そのため。フレッツ系の光回線はフレッツ光が利用できるエリアとイコールになるので、フレッツ光のサイトから自分の住んでいる地域でフレッツ系の光回線を利用できるかどうかを確認しましょう。もし引ける場合はドコモ光やSoftBank光を含む、たくさんの光回線を利用することができます。ちなみにエリアカバー率は90%以上なので、とても多くの地域で利用することができます。
電力系
次に電力系について説明します。電力会社の電力事業と光回線事業が相性が良く、様々な電力会社が光回線を提供しています。例えば、関西電力のeo光や中部電力のグループ会社が運営するコミュファ光などがあります。自分が住んでいる地域で電力系の光回線を利用できるかどうかは、地域の電力会社のサイトなどから確認してみてください。
独自回線系
そして上記2つとは別に、NURO光やauひかりなどの独自回線を利用する光回線事業者があります。これらの光回線が利用可能かは、それぞれのサイトのエリア検索で確認してみてください。少し面倒くさいですが、フレッツ系ではないので、それぞれのサイトに訪問し、エリア検索を行う必要があります。
建物の配線状況(集合住宅の場合)
集合住宅で光回線を選ぶ際には、他の住民によって光回線が引かれているかどうかを確認しましょう。すでに引かれている光回線に相乗りすることで以下のようなメリットがあります。
- 工事期間の短縮: 既存の配線を利用することで、新たに工事を行う必要が少なくなり、工事期間が短縮されます。これにより、早くインターネットを利用開始できるでしょう。
- 工事費用の削減: 既存の設備を活用することで、工事費用が安くなる可能性があります。特に、共用部分の工事が不要な場合、コストを抑えることができます。
- 月額費用の削減: 同じ光回線を他の人と共用するため、各家庭の月額費用が安くなることが多いです。ただし、共用することにより他の家庭で大量の通信を流していると自分の家の通信速度が落ちてしまうというデメリットも内包しています。
自分が住んでいる集合住宅で他の住民によって配線されているかを確認するためには各光回線のサイトを見てみたり、建物の管理会社に問い合わせて見たりするのがよいでしょう。ただし、相乗りを最重視して品質が悪い回線や無駄に高い回線を選んでしまっては元も子もありません。またこの調査は少し手間がかかってしまいます。そのため、これは優先的に検討すべき事項ではないと考えています。まずは他の要素を考慮して、その後に相乗りできそうなちょうど良い回線があればそれを選ぶのがよいと思います。
機能・性能の検討
続いては光回線の機能・性能の検討をしましょう。筆者はここが最も重要な要素と考えています。光回線に対して適切な機能・性能を選ぶことで、快適なインターネット環境を構築しつつも、過剰な費用を支払うことを避けることができます。検討すべき事項は主に以下の2点と考えています。
帯域(通信速度)
帯域は、光回線を選ぶ際に多くの人が重視する部分でしょう。確かに帯域は、快適なインターネット環境を構築するために非常に重要な要素の一つです。しかし、必要な帯域は利用環境や使い方に大きく左右されます。
光回線の帯域(通信速度)には、主に1Gbpsと10Gbpsのプランがあります。まず始めに理解しておいていただきたいことは、1Gbpsの回線だと常に1Gbpsの通信速度が、10Gbpsの回線だと常に10Gbpsの通信速度が出るわけではありません。例えば1Gbpsの回線だと最大1Gbpsが出るようになっていて、平均的にはだいたい数10Mbps~500Mbps程度になります。具体的にどの程度の数字になるかは住んでいる地域や契約している光回線(プロバイダ)種別、接続方式によって変わります。
最近では、高速な10Gbpsプランが提供されるようになり、それを推奨する広告や記事も増えています。しかし、実際のところ、1Gbpsプランでもほとんどの家庭において十分なパフォーマンスを発揮します。たとえば、家族が複数のデバイスで同時に動画ストリーミングを楽しんだり、リモートワークでビデオ会議を行ったり、さらにはオンラインゲームをプレイする場合でも、1Gbpsで問題なく対応できることがほとんどです。
現時点では一般家庭で10Gbpsが本当に必要になるシナリオは、非常に特殊なケースに限られます。例えば、家庭内で大量のデータを頻繁にアップロード・ダウンロードする必要があるプロフェッショナルや、数十台のデバイスを同時にインターネット接続するような環境がそれに該当します。ただ、最近は4K,8K動画も普及し始めており、だんだん必要な通信帯域が大きくなっていることは間違いありません。そのため、現時点では料金が高くなってしまいますが、将来的なことまで考えて10Gbpsの光回線を引いておくという手はもちろんありだとは考えています。ただし10Gbpsの光回線を選ぶ場合は、それを接続するネットワーク機器やLANケーブルも10Gbpsに対応している必要があることはお忘れなく。
どうしても必要な方以外は高額な費用を支払って10Gbpsにアップグレードするよりも、次のセクションで説明するIPv6を利用する方が間違いなく費用対効果が高いでしょう。
IPv6アドレスの利用
個人的には最も重要な要素と考えています。まずIPアドレスやIPv6アドレスってなに?って方は以下の記事を参考にしてください。
通常の光回線では何もしなければIPv4アドレスのみ利用できるようになっています。技術的な細かい説明は割愛しますが、例えば1Gbpsの光回線でIPv4アドレスのみを利用している場合は実際には10Mbps程度しか出なかったのに、IPv6アドレスを利用し始めてからは平均的に300Mbps程度出るようになることもざらにあります。そのためIPv6アドレスが利用可能な光回線を選ぶことを強くおすすめします。
注意すべき点として、IPv6を活用するためには、光回線だけではなく家の中に設置するルータもIPv6に対応している必要があります。悲しいことに日本のIPv6の規格は「v6プラス」や「Transix」、「OCNバーチャルコネクト」など無駄に乱立しており、光回線毎にどの規格を利用しているかは異なります。そして、ルータはその規格に対応している必要があるので、事前に仕様書などで調べておくことをおすすめします。
調べるのが面倒くさい方は運任せでもよいかもしれません。ただし、運任せで決める場合はBUFFALOなど、なるべく和製のルータをおすすめします、海外製ルータは日本のややこしいIPv6事情に対応していない場合はあったりするので。
光回線選び
事前調査・検討お疲れさまでした。ついにここからは調査した結果をもとに光回線を選んでいきましょう。選定する上で大事だと考える要素を上から順番に記載していきます。
料金
これまでに決定してきた要素を満たす光回線の中で、料金がなるべく安いものを選ぶことが最も重要と考えています。料金が安いと回線が遅いんじゃないかと思う方もいらっしゃるかと思いますが、筆者の肌感覚では実際そんなことはありません。料金が安くても速い場合や高くても遅い場合など、様々なパターンがあり、実際に速いか遅いかは運の要素がとても大きいです。それでは無責任に感じられるかもしれませんが、そのために前述のIPv6アドレス利用を行うことで、どのような光回線でも回線速度を速くする確率をかなり高めることができます。その上で、安ければ安いほど家計的には嬉しいかと思いますので、なるべく安い回線を選ぶのがよいと考えています。
光回線利用に伴って発生する費用の計算はとてもややこしいです。なぜなら、初期費用、月額費用、キャンペーン・のりかえ割など、様々な要素があるからです。特にキャンペーンや乗り換え割の中には、申込みを行う時期、家庭で利用しているスマートフォンの契約や電力会社の契約、既存で利用している光回線契約など、様々あります。ここまでややこしいのは各光回線業者が単純に比較できないように各社が試行錯誤した結果なのでしょう。利用者側として手間はかかりますが、少しでも料金を安くするためには時間をかけて調査を行う必要があります。
一般的に回線は利用を開始してから、2,3年は利用されると思いますので、長期的に計算して安くなる回線を選択してください。価格.comなどのサイトから比較的簡単に光回線の料金を比較することも可能ですので、安い光回線を探す際は一つの参考にしてください。
とは言っても、様々な光回線の料金を一つ一つ比較していくのが面倒くさいかと思いますので、そんな方々向けの選び方を伝授します。まずは自分や家族のスマートフォンの契約をもとに決めるのがよいと思います。4大キャリアそれぞれが光回線事業を行っていますので、それぞれのキャリアの光回線を契約するとセット割が適用され、それなりに安い金額になります。セット割が適用されるスマホ契約がない方は、本記事の最後に、筆者が考えるどんな方にも安牌な選択となるであろう光回線を紹介していますので、そちらを参考にしてください。
サポート
料金の次に検討すべき事項はサポートでしょう。ただし、サポートは実際に利用してみるまで良いか悪いかの判断は難しいです。口コミなどを見れば利用者の声を知ることはできますが、それが正しい情報なのかもわかりませんし、もしかしたらその声を受けてサービス側も改善されているかもしれません。大手の会社だからといってサポートが良いとは限らず、実際に大手の会社でもよくサポートが悪いという声はあがっています。そのためサポートも重要な要素ではありますが、あくまで参考にする程度でよいと考えています。
オプションサービス
光回線のオプションに、セキュリティサービスやWi-Fiルータのレンタルサービスなどがあります。しかしこれらも二の次でよいです。光回線が決まったあとでもし良さそうなオプションサービスがあった場合は利用を検討してみてください。
おすすめの回線
以上がネットワークエンジニア視点での光回線の選び方です。具体的な回線名は挙げていませんが、考え方を記載していますので、それをもとに自分に合った光回線を選んでみてください。
ただ、これまで話した選び方は煩雑に感じる方も多いと思います。どうしても手間を省きたい方向けにおすすめの回線を一つだけご紹介します。GMOとくとくBB光はスマートフォンや電力会社の契約にも関係なく、料金面やサポート面でバランスが良いので、どなたにとってもそれなりに良い選択肢となるでしょう。
GMOとくとくBB光はフレッツ系の光回線で、v6プラスというIPv6サービスが利用可能です。そして、何と言っても料金が安いので本記事で解説した光回線の選び方にとてもマッチしています。もしご興味がある方は以下のリンクよりお申し込みください。
まとめ
今回は筆者が考える光回線の選び方を記載しました。色んな考え方がありますので、本記事で述べられていることが全て正しいとは限りません。ただ、他の記事ではあまり言及されていない、ネットワークエンジニアならではの観点で選択方法を述べてみました。ぜひ今後、光回線を選ぶ際の参考にしてください。